いま、人間教育の大切さをおもふ教えるとはともに希望を語ること学ぶとは真実を胸に刻むこと

わたくしたちの挑戦

いまふたたび、専門学校が見直されるなか、実社会との関わりから専門教育機関の原点を見つめ直し、わたくしたちは二十一世紀、産学協同教育による新たな専門学校をめざします。

社会が求める人材像を受け止める

わたくしたち京都芸術デザイン専門学校では、それまでの大学・短大を中心とした偏差値教育の弊害から脱し、専門課程を担う教育機関の本来あるべき姿、役割、価値を真摯に見詰め直すなかで、混迷を脱しきれない他校に先駆け、その指針を「新専門学校宣言」として、2000年4月に採択いたしました。
この指針は実社会との関わりを重視するなかで、新たな専門学校として生まれ変わるため、教育の現場をどのように変革していったらよいか、具体的にまとめたものです。
その趣旨は企業、産業界と学校・教育界とがそれまでの垣根を超え、社会が真に欲する人材を育成するために連携し、産学協同教育というコンセプトのもとにカリキュラムを実施することにあります。
わたくしたちは、なぜこのような指針を明らかにしたのか?
その背景には、いま、社会が求める人材像を、改めてしっかり受け止めようとの思いがありました。それは同時に本校が育て輩出する人材像を明確にすること、そのための教育方針をはっきりとさせることでもありました。

企業レベルで通用する人材を育てる

卒業後、社会人として自立し、暮らしを成り立たせて行くためには職業を持たなければなりませんが、その多くは企業に所属する、即ち就職を通じて実現されます。就職を希望しない学生、ご実家で結婚されて家庭に入る方も中にはいらっしゃるでしょうが、職業に限らず、家庭に限らず、どのような生き方をするにせよ社会との関わり、他者との関係なくしては社会生活は成り立ちません。
新専門学校宣言では本校の教育方針を学生ひとり一人にはっきりと理解してもらうため、本校が輩出する人材像に関し、企業レベルで通用する人材を育てるといった具体的表現を用いて明確にしています。但し、ここでわたくしたちは就職先としての狭義だけで企業が求める人材にこだわっているわけではありません。企業というのは極めて社会的存在を取り上げることで、社会や他者から受け入れられる人間像を端的にわかりやすく感じてもらおうとしました。
その結果、社会という枠組みの中で、自身を認めてもらうためには何が必要か。逆に他者を受け入れるためには何を学ばなければならないか。企業という場を通じて、学生にもっと社会を知ってもらおうと考えました。

大学生・短大生との棲みわけ

本校が輩出する人材像を明確にした、もう一つの理由として大学・短大教育との棲みわけがあります。かつては専門学校もある部分で、輩出像について大学生を追従する姿で捉らえていました。しかし、そうしたスタンスは大学・短大との棲みわけを曖昧にさせ、本来それぞれが担うべき役割・使命を希薄にし、学歴偏重の評価基準のもと、専門学校生は大学生や短大生との差別化を強く打ち出することができないままにきました。
いま、低迷する日本経済のもとでは何が起きても不思議ではありません。かつては起きる筈がないと断言できた事態が次々と身近な現実となってます。僅かこの10年程の間にわたくしたちの社会は大きく変わってしまいました。
日本の社会が絶対との思いで築き上げてきた、言わば文化とも言える終身雇用制度の崩壊もその一つです。今迄であれば、偏差値の高い四年制大学や、名門と称された短期大学を卒業して大手企業に就職さえすれば、その後の暮らしは終身雇用に守られ、ある程度保証されていました。しかし、今日、生き残りを賭けた企業経営のもと、求められる人材象は学歴の有無や大学の知名度ではありません。

専門学校生が求められる理由

こうした社会状況を微妙に反映してか、進学傾向についても、近年、変化が表れてきています。文部科学省の報告にも大学・短大への進学に陰りが見え始めたことを示すものが目立つようになりました。特に短大への進学は著しく減少しています。一方で就学の基本を同じ2年間とする専門学校についていうと、一時期の横這い状態から上向き、堅実な伸びを示してきており、文部科学省でも専門学校の場合、進学者からの支持傾向にあると特徴づけています。
その理由として、産業界ならび企業が求める人材を実質的に育成できる教育機関としての期待、それまでの学歴有無よりも人間性や職能重視の教育に対する広い社会的希求を上げています。
企業から本校に寄せられる生の声を1つお話します。
経営の上で人件費の扱いはいちばん大きな課題となるため、入社後、企業が行なう新人教育でのコスト削減は重要な経営課題です。
それまで日本経済や企業には十分体力があり、新入社員には時間と費用をかけて再教育し、実戦力になるまで育てる余裕がありました。いまや企業は職能向上のための人材教育もおぼつかない状況ですから、入社教育の余裕など無いも同じです。裏返せば、直ぐにでも戦力となる人材、即ち仕事を任せて実質貢献ができるスタッフを求めているということです。そのためには知識・理論・学歴よりも技能・実践・人間性といった面が備わった人材が求められます。
ふたたび専門学校が見直される理由。それは、技能・実戦・人間性を備えた人材を育成し、輩出できる教育指導のノウハウを有しているからです。さらに、専門学校が輩出する人材への評価は今までのように技術屋として限られた一面だけに終わらず、もっと広く企業経営の見地から根本で求められる存在へと高まってきています。

いま、人間教育の大切さをおもふ

本校が掲げる産学協同教育では、日本の将来を展望し、広く理解を示していただいた企業様から、学生がもっと社会を知るための教育機会をインターンシップ受け入れや受託研究制作などの形で提供して頂くと共に、社会や企業が求める人材像の普遍的価値を各自の人間性と見極め、教育計画の上で人間教育の徹底を最重要課題としています。ちなみに本校ではインターンシップ(実際の職場での就業体験を通じて行なう教育)は、他校のように学生の自由意志とせず、社会を知るための積極機会として必修科目に位置づけ、全学生が参加するカリキュラムを組んでいます。
挫けずやり通し、単位を修得した学生のレポートからは社会の現実を垣間見ることの意義の深さ、学生としての甘えを払拭して体験したことで、はじめて培われた生きる力とでもいうべきエネルギーと自信が生の声として多数報告されています。
産学協同教育は特別講義や海外研修の点でも大きなメリットを与えてくれています。
ファッションデザインコースを例にあげますと、エルメス社の社長が本校学生を前に2時間にもわたる講義を引き受けて下さいました。パリにあるカルティエのジュエリー工房への見学を関係企業のご協力により実現しています。他校ではまず考えられません。
京都芸術デザイン専門学校の教育理念に賛同して頂いた企業のお陰であり、同時にわたくしどもの誇りであります。
一方で自然に触れるための環境フィールドワークを全学規模で実施しています。
四季に応じた草木の色や姿を観ることでデザイナーとしての感性を磨き、ひとり一人がもっているすばらしい素養を自然界に身を置くことで触発するデザイナー教育の基本ともいえる面でも、人間教育を機軸にした取り組みを行なっています。
また、互いのコミュニケーション能力を高めることにつながる挨拶運動では、毎朝発声する「おはようございます」、授業開始時の「よろしくお願いします」といった繰り返しの中から、他者への気配り、心遣いができる気持ちへと心の動きを高める指導を、時代状況からは愚直と思われるでしょうが、真正面から取り組んでいます。教職員が毎朝、模範を示している清掃は、その後姿から多くの学生に喫煙の際のマナーや皆で決めたことはきちんと守るといった心構えを頭ではなく、その心に感じ取らせています。

本校の将来目標

本校を巣立った学生が就職先の企業の方から、京芸デの卒業生が入社して以来、社内が活性化して大きく変わった。他の社員にも活気が窺えるようになった。
きちんとした挨拶や礼儀正しい態度がお客様からの信用を得ている。など、即戦力としての能力以上に人間性に対する評価をいただけることを、本校では、大学やほかの専門学校と差別化をはかる上での要諦と考えています。

本校としてこうした人間教育に対する方針を貫くことで、多くの企業から我が卒業生への人物評価を頂戴し、実績とすることで、将来、本校学生に対しては、求人募集が個々の学生への指名でくる程に高めたいと具体的目標をもっています。

新入生ひとり一人のモノづくりへの情熱や興味を将来の職業目的へと導くための教育を実現するためには、その専門技術を身につけるための根となる部分、即ち人間性の素地を養う教育を大切にすることが重要であり、現在、日本の社会がわたくしたち教育関係者に投げかけている課題もその点に集約できます。

いま、まさに教育機関のみならず、社会全体が健全な常識に立ち戻る決意を迫られているのではないでしょうか。
この点につきましては、保護者の皆様にもご一緒になって問題意識をお持ち頂きたいと思います。

学校長ごあいさつ

私が本校の校長と大学の副学長を兼務していて考えることがある。大学と専門学校はどう違うのか、学生にとってどちらがいいのだろうかということである。幸いどちらもこれからの社会に必要とされる人材が時流に合って、引っ張りだこになってきた。知識偏重型からクリエイティブ型人材にスポットが当たりだしたようだ。しかし、2年の差をどのように説明するべきかが難しい。特に最近は、大学で就職活動をゆっくり構えるわけにはいかず、専門学校と大学、同じ土俵での就職の戦いが起きている。大学は時間がある分、幅広く教育の機会を持つことができ、倍の時間をかけて教えているから有利と思われがちだ。

しかし、社会で頭角を現し活躍するのは大卒者が多いかというと、決してそうは思えない。それは、専門学校を卒業し、早めに社会に出て現実の中で成長することで、大卒者より有利に働いているからかも知れない。専門学校では、授業は腰を据えて取り組めないし、スピードが要求される。裏返せば、時間が短ければ自ずと集中力が増す。デザインはめまぐるしい社会変動の中で俊敏に問題を解決して、答えを導かなければならない。本校の授業は現実社会にうまく歩調が合っているのだ。これは強い武器だ。2年間の内容や時間差を克服して、ものづくりのコツを身に付ければ、2年得したということか。

京都芸術デザイン専門学校 学校長 大野木啓人

京都芸術デザイン専門学校
学校長 大野木啓人